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彼の住む街の天気は カツセマサヒコ

今年のクリスマスは、平日。 クリスマス当日、あなたは好きな人と会えますか? 忙しい日々を過ごすあなたに贈る短編小説を、カツセマサヒコさんに書いていただきました。 最後までお楽しみください。

この記事の目次

彼の住む街の天気は

テレビ画面に、天気予報が映っている。 今日は最高気温が11度で、最低気温は5度。天候は窓の外のとおり、終日、曇り。 起き抜けのフローリングはすっかり熱を失っていて、触れるたびに堅くて冷たい。ただ寒いというだけで、なぜか部屋の明かりすら、うっすらと弱まったように感じる。 テレビ画面は、全国天気図に切り替わる。 東京の最高気温は、8度。こちらよりも更に低い。しかも気候は、午後から雨。 「傘が手放せない一日となるでしょう」と、キャスターが淡々と告げる。寝間着姿のままぼんやりと画面を見ていた私は、その予報にため息をつく。 今日も、彼と私は、同じ天気の下にいない。 「昨日よりもあったかいね」という平凡な会話すら成立しない二人の間には、500キロメートルの距離が、悠長に横たわっている。

会社の同期である私たちは、たった二週間の新人研修の間に、呆気なく恋に落ちた。 初日の懇親会で同じテーブルになったときは、気配りができる人だな、程度にしか思っていなかった。けれどその日、三次会まで騒いで、いよいよ帰ろうとしたところで、不思議なことが起きた。 大きな幹から枝葉に別れるように解散していく同期たちに手を振るけれど、なぜか彼と私だけは、最寄駅の改札を出てもなお、同じ道を辿っていた。 「近所すぎる」 ワンブロック先。150メートルも離れていない距離に、彼の家があった。たったそれだけのこととも言える。でもそれは私たちにとって、運命と錯覚するには十分すぎるほど、良く出来すぎた偶然だった。 意識しないようにすればするほど、お互いの存在を強く意識する。「展開が早すぎる」と笑いながら、翌々日には付き合うことになっていた。きっと幸せの最高潮なんてなかなか長続きしない。それをどこかでわかっていても、当時の二人は根拠もなく、「私たちなら大丈夫」と高を括って手を繋いだ。

「東京出身であれば、大抵は都内の勤務地になるから」 そのように説明を受けて、私たちはこの会社の採用試験に挑んだはずだった。だからこそ多くの同期と同様、彼も私も、その日の配属発表をのんびりと構えていたのである。「同じオフィスがいいね」なんて考えもなくはなかったけれど、彼がそばにいると、それだけでニヤけて仕事にならない予感もあった。いっそ別々のオフィスがいい。そのくらいに思っていたのが本音だ。 でもその日、私は人生最大の外れクジを引き当てることになる。 「大阪、難波オフィス、営業部」 二週間、研修の様子をずっと見守っていた人事部長が、私の名前を呼ぶなり、聞き慣れない単語を口にした。大阪? 難波オフィス? 出会って三日で付き合った私たちは、付き合って十日にして、遠距離恋愛を強いられることになった。

「感情の貯金をする感じ。辛いことも、楽しかったことも、会えない日に起きるたくさんの出来事を、グッと貯めて、会えたときに、全部ぶつけんの。そしたら、会えた日は、会えなかった分だけ、楽しいじゃん?」 新幹線の改札前、彼はそう言って、なかなか泣き止まない私の頭を少し乱暴に撫でた。彼も泣いていたことについては、私は気付かないフリをした。 あれから、二年。会えない日に起こるたくさんのこと、ふとした時に訪れる他の人からの誘惑のこと、言いたいことも、言えないことも、たくさん敷き詰めて、私は今日も、私の人生を生きている。彼もきっと、同じように500キロ離れた土地で、暮らしている。

「クリスマス、やっぱり難しそうだよ」 一昨日の夜、スピーカーモードにしていたLINE通話が3時間を超えたところで、彼は言いにくそうに、そう呟いた。 今年の12月24日、25日はまるっきり平日で、年末はかなりの繁忙を迎える私たちに、休める雰囲気は全くなかった。明日も会社だというのに突然彼の家のインターホンを鳴らせるほど私も若くなかったし、堂々と有給を取れるほどの勇気もない二人だった。何組もの遠距離カップルを引き裂いてきた実距離が、私たちの前にも堂々と立ちはだかっていた。 「そりゃあ年末だもん、私も、仕事やばいし」 「ほんとそれ。クリスマスとかさ、子供の頃はただテンション高くはしゃいでたけど、社会人になったら、まじで浮かれてらんないよね。年末の締め、間に合うかギリギリだわ」 本当は少し、寂しかった。 でも、一度も長い時間そばにいられたことがない私たちは、ある意味ラッキーだったのかもしれない。例えば半年間でも同棲していたものなら、きっとあまりの寂しさに、心はねじ切れ、悲鳴をあげて、毎日お風呂場で泣いていただろう。そうならずに済んだことは、むしろ幸いだと思うようにしていた。

会えないことがわかったなら、せめて何か、プレゼントでも送ろうか。 そう思いついたのは、奇しくもクリスマス当日、会社の付き合いとはいえ、異性もいる飲み会に顔を出すことへの罪滅ぼしがしたかっただけなのかもしれない。電車に揺られながら「クリスマス ギフト」と安易な検索ワードでSNSやGoogleを徘徊していると、それらしいECサイトを見つけた。

彼は、何が好きだろう? 頭の中で、一カ月は触れていない彼の姿を思い出す。アクセサリーなどの過度な装飾を嫌って、いつもシンプルな格好をしている彼だ。カバンやリュックは、気に入ったものだけを使っているから、勝手に送ったって使いやしない。とはいえ靴下とかだけだと、なんだか寂しい。 スワイプしながら、あれこれと妄想を膨らます。もうすぐ乗り換えだと思って一度スマホをしまおうとしたその時、リバーシブルの、カシミヤのマフラーを見つけた。

首が長いなあ、と、彼に抱きしめてもらうたび、思っていた。彼の鎖骨から頬までのスペースに顔を埋めると、まるでパズルのピースみたいにいつもピタリとハマる。私たち二人は、本来一つだったのではないか。そう思うほど安心できるあの空間がとにかく好きで、私は彼に会うたび、私だけのあのスペースに飛び込んでいる。 きっとあの長い首は、この冬もやっすそうなマフラーに包まれて、寒そうにしているに違いない。少し弾む心を抑えながら、彼が好きなカーキとグレーでリバーシブルになったマフラーを購入した。 ギフトラッピングも、クリスマス仕様でありながら、派手すぎないもの。去年のプレゼントは靴だったのだけれど、ラッピングされた袋に大きく描かれたサンタのイラストに文句をつけてきたから、今年はそこもクリアだ。あとは、12月24日の日付を選んで、彼の住所を登録し、完了。 ほら、できた。 会社に着くまでに購入を済ませられたことに安心しながら、スクリーンショットしておいたマフラーを見返して、ニヤつく。きっと、喜ぶだろうし、慌てるだろうな。「次に会ったときにちゃんとクリスマスしよう」なんて結論づけたはずなのに、当日に届いちゃうんだもん。 サンタクロースもこんな気分で、当日を楽しみにしているのだろうか。私は浮き足立つ気持ちをなんとか騙しながら、その日までいつも通りに働き、いつも通りに彼と連絡を取り合った。

予想外のことが起きたのは、プレゼントが届くはずの12月24日の夜だった。 会社の飲み会を終えて、カップルで賑わう難波の街を早足で歩きながら、彼から連絡が来るのを待つ。わざと不機嫌を装って「フザケンナヨ」と照れながらかけてくるあの声を聞きたい。そう思って、自分からは連絡しないように今朝からグッと我慢していた。 気を抜くと口角がムズムズと痒くなる。スヌードで口元を隠しながら、家路をたどる。そろそろ向こうも、自宅に帰る頃だ。喜んでいる彼の声に集中できるよう、家で万全の状態で連絡を待ちたいと思って、ほぼ駆け足になりながら、自宅を目指していた。

異変に気付いたのは、ポストに入っていた宅配ボックスの通知案内を見たときだ。 自分で何かを注文した覚えはない。強いて言えば彼へのプレゼントくらいだけれど、きちんと彼の家の住所を入力して、登録したはずだ。だとしたら、誰から、何が送られてくる? ポストからレシートのような紙を取り出すと、宅配ボックスに埋め込まれたダイヤルを、手書きで記載された暗証番号に合わせていく。ガチャン、と音がすると、分厚い扉が開く。 立体物。そこまで大きくはないけれど、プレゼントのようにデザインが施された真っ赤なダンボールが、宅配ボックスの真ん中に、そっと置かれていた。

心臓の上に重たいものが突然降ってきたように、ズキンと、衝撃が走る。さっきまでとは違う意味で、鼓動が早くなる。エレベーターに乗るより早くラッピングを解くと、可愛らしいパッケージが出てくる。リップだ。なんで、どうして、なんで? エレベーターをこじ開けるように降りると、部屋の扉を乱暴に開けて、ああー!と叫びながらベッドまでダイブする。パッケージを開けると、ピンクゴールドのそれが顔を出した。ボディに、私の名前まで彫られている。部屋の照明に照らすと、キラキラと輝いた。可愛い。めっちゃくちゃ可愛い。頬の内側から頭の先までカアッと熱くなって、全身に力が入らなくなる。 慌ててスマホを探して、彼のLINEを開く。通話ボタンを押そうとしたら、画面がフリーズした。なんでこんなときに?と思ったら、彼からの着信がきた。きっと、向こうもプレゼントに気付いたんだ。すぐにボタンを押して、泣きそうなくらい高まった気持ちを抑えながら、わざと声を低くして言う。 「考えること、似すぎなんだけど!」 向こうで笑い声が聞こえる。そして、不機嫌そうに、でも、嬉しそうな声で、返事が届いた。 「ほんと。真似すんなよ、バーカ」 驚きと喜びと興奮で、心がもっとグシャグシャになった。 感情をはみ出た部分が涙になって、頬をつたう。 「マフラー、きちんと着けてくよ。ありがとね」 「私も、ちゃんとこのリップ塗ってく」 こっちの天気は、相変わらずの曇り。向こうはきっと、冷たい雨の夜。 それでもきっと、私たちは大丈夫だ。 時計はもうすぐ、12月25日を迎えようとしていた。

執筆:カツセマサヒコ  モデル:塩田恵理佳  撮影:そーせん 

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